水口民夫さん（35歳）は16歳の時、バイク事故で植物状態となった。母の芳江さんは、反応がなくとも毎日話し続けた。
2年後に入った療護センターの方針で、チューブをはずし、毎朝着替えさせ、ベッドのまま散歩に行き4ヵ月後。右足がわずかに動いた。さらに７年たち、「生きていてよかった」とワープロを介して伝えた。
　そこを出る時に、母は在宅介護を選んだ。今も声は出ず、手足は麻痺し、石のように硬く曲がったままだ。ベッドの手すりを叩いて会話をする。あいうえおのどの行の、何番目かを知らせる。同世代の男性ヘルパーとは、よく笑いが起きる。介護されながら、母の手作りの食事を、自分の口で食べる。最近は自立に向け、電動車椅子の練習も始めた。