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原発があるまちの記憶(仮題)

 私が初めて、福島原発周辺地域に入ったのは、2013年3月のことだ。東日本大震災と原発事故から2年後。大学時代の友人に、双葉町の住人がいた。そこで目にしたのは、地震と津波と放射能による、三つ巴の惨状だった。
 それから今日に至るまで、浪江町、富岡町、飯舘村、南相馬、福島市内や二本松の仮設住宅、いわきの復興住宅に住む人々、元原発労働者などの撮影を続けてきた。浪江の帰宅困難地域は、美しい自然の中で驚くほど線量の高い場所もあり、防護服を着ての撮影は緊張する。
 被災者それぞれの状況はすべて違う。津波で家族を失った人、避難生活が続く中で家族が過労死した人、故郷から離れた場所で暮らし始めた人、リスクを知りつつ戻った人・・。
 自死した家族への思いから、裁判に立ち上がった女性もいる。事実を残そうと周囲の写真を撮り続ける女性や、仮設住宅で毎月小さなカフェを開き続ける女性に出会い、懸命に生きる人々の姿に自分が励まされもした。
 これまで撮ってきたのは、福島原発事故に関するごくわずかだ。まだ作品化までは時間がかかる。記録して残しておかなければ、あったこともないことにされてしまう。それが最もこわい。

​(文・熊谷博子)

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