このHPに、昨年の8月以来投稿していなかった。
長い間撮り続けた作品の完成に追われていたこともあるが、多くの作品を一緒に作ってきたスタッフの死に、何だか書く元気が出なかった。
VE.・録音の奥井義哉さんが、私の自宅兼事務所で打合せ中に倒れたのは2021年4月。脳幹内で、脳出血と脳梗塞を起こしており、緊急搬送したが、どうしようもなかった。以降、”植物状態“と言える状況が続いた。療養型病院への転院の際、一緒に車に乗り込むことのできたスタッフの一人が、仲間からのメッセージを読み上げると涙を流した。私たちは一縷の望みを抱いたが、意識は戻ることなく、昨年、22年の12月24日に亡くなった。
奥井さんくらい、「愛され力」の強い人間を知らない。スタッフからはむろん、撮影に行った先の方たちからもだ。
撮影現場で、相手と最もかかわるのは、監督・ディレクターで、次にカメラマン。ヘッドホンをつけ、長い竿につけたマイクを持つ録音担当者が、忘れられないような印象を与えるのは、本当に珍しい。
倒れてからの1年8カ月は、コロナ禍で家族・親族もほとんど会えず、仕事仲間は転院時のわずかな時間を除けば、一度も会えなかった。
やっと会えた時は、棺の中だった。火葬場も人数制限があり、数人の仲間で骨を拾いにいった。
胃ろうで栄耀補給をしていたから、痩せてはいなかったが、かつてはあちこちの祭りに行っては神輿を担いでいた、頑丈な体躯は短く縮んでいた。
先週やっと、奥井さんの墓参りに行くことができた。
故郷の伊豆・下田にある、教会の納骨堂。まるで、メルヘンの世界に出てくるような小さなかわいい納骨堂で眠っている。
彼自身はクリスチャンではないが、家族が信者だということで、ここで眠ることになった。
何だかなぁ、という複雑な思いからなかなか抜けられないのだが、心をこめて、みんなの奥井さんの会を開くことにした。
奥井義哉さんをご存じの方、また改めてご案内しますが、5月19日(金)19時~ 映画館ポレポレ東中野の、カフェポレポレ坐で、「奥井義哉さんの会」を開きます。
そして、今仕上げ中の作品は、7年間、奥井さんと撮り続けた彼の遺作でもある。大事に大事に完成させたい。
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